冬・・・「補陽温腎」
冬は寒さのため植物や動物も冬眠に入り、活動を控えます。
人も寒さのため体がにぶったり、外出をひかえるようになりがちです。
そうなると、エネルギー代謝が低下し、これに冷えが加わると血流が悪くなり、正常な体温調節ができにくく、免疫力が低下し風邪などにかかりやすくなるのです。
そこで体を温め、腎臓の機能を高める食物をとります。
体を温める
黒豆、昆布、きのこ類、マグロ、たら、ねぎ、小松菜、かぶ、里芋、いわし、うなぎ
造血機能を高める
ほうれん草、ごま、牡蠣
みなさんの病気を治すのはみなさん体に備わっている力、治癒力だけなのです。
今日は、みなさんの持つ治癒力を今より高めることができる「食」についてお話しさせていただきます。
ポイントは2つです。
@自分の体のことを知る
A食材のパワーで治癒力をあげる
自分や家族、身近な人が体調不良になると、考えるのが何を食べたさせたらいいんだろう?
日本には「食養生」という言葉があります。
例えば風邪のときなどは、栄養のある温かい飲み物や食べ物をとるというのが定番です。
食欲がなくてもたくさん食べて体力をつければ風邪に立ち向かえると考えて、風邪から「食べ逃げ」をしてきました。
しかしこれば食糧事情が悪かった時代では通用しても、現在の日本人に当てはまるのでしょうか?
今の日本人の多くは「食べすぎ」による病気が多いといわれています。
皆さんの良くご存知の生活習慣病などはその象徴ともいえますね。
「食べすぎ」て体を壊しているというのは、取りすぎた栄養で、体の機能が低下している。
この場合は胃腸にたまっている老廃物を早くからだの外へ追い出し、胃腸を綺麗にすることが大切です。
そして胃腸の動きを活発にし、代謝をよくしていく。具体的には栄養価の高い食べ物はむしろ避けて、腸の掃除に役立つ食べ物や代謝を促すものを食べることが必要なのです。
同じ風邪でも、「食べすぎ」(栄養過多)からくるものなのか、「食べなさすぎ」(栄養不足)からくるものなのか、それによって養生方法はちがってくる。
もしかしたら、健康にいいから、と思い込んで食べているものの中に、みなさんの不調の原因があるかもしれないのです。
例えば、肩こりがひどいので、きっと疲れがたまっていると思って、体力を増やそうとにんにくをたくさん取る。
サプリメントなどで、毎日欠かさず食べるなんて方もいらっしゃるかもしれませんが、にんにくは薬効成分が強いので、体力旺盛な人や肥満気味の人、高血圧の人がたくさん取ると、のぼせを助長してしまったり、いらいらや不眠などの症状があらわれることがあります。
ちなみにこういった方が必要な食養生は、生野菜やで体を冷やし、かんきつ類など香りのよいさっぱりしたもので、体のめぐりをよくしてあげることでこりは緩和されます。
自分の体に何が必要で、何がいらないものなのか、しることが大切なのです。
ではどうやったらわかるのでしょう?
自分の体を客観的に見てみましょう。
毎日体脂肪を測ったりしてチェックしているよというかたもいらっしゃるでしょう。
もちろん数値で自分の体を見るのも大切ですが、そこにプラス鏡に映った裸の自分の体をチェックしてみてください。
鏡には数値には出てこない体の変化が出ています。
たとえば数値は変わっていないのにたるんでいるとか、猫背になってきているとか。血管が良く見えているとか、そして触ってみてください。
肌がざらつくとか、おなかが張っているとか、なんらかのサインが毎日少しずつ違う形で体からでています。
体は正直で今、足りない栄養素を欲しがります。
汗をかくとスポーツドリンクがおいしかったり、いっぱい頭を使って勉強すると甘いものが食べたくなったり、これは体からの自然のサインです。
どんな情報よりも、みなさんにとって必要なものは、何かいう答えを出してくれるのは皆さんの体です。
客観的に見ることで自分の状態が少しづつわかってくるようになります。
今よりもう少し体からの声に耳を傾けてみましょう。
「医食同源」という言葉をご存知でしょうか?
人間が、健康を維持したり病気から快復するために、薬と食べ物が同様な効果を持つことを意味した言葉。
医食同源の発症の国、中国ではもともと皇帝の健康管理のため、食医学という学問があり、それをもとに、長い年月を経て庶民の間に伝えられてきた薬膳料理があります。
「病気になったら病院にいく前に、薬屋へ、薬屋の前に八百屋にいけ」という言葉があるそうです。
薬膳というとどんなイメージありますか?
健康にはよさそうだけど、薬くさそうとか、まずそう、むずかしそう?
そんなに深く考えることはありません。
薬膳に使われる生薬は、普段私たちが食べているもの多いのです。
たとえば、山芋も「サンヤク」といわれる生薬のひとつで、他にもしょうがやミント、シナモン、にんにくなども生薬です。
野菜や木の実など、普通の食物の中で薬効効果の強いものを選んで、おいしさは二の次にし、薬効成分を凝縮させたものが生薬とされています。
つまり、身近な食事(カレーとかパスタだって)も薬効効果のある「薬膳料理」のひとつといえます。
それを食べる人の体の状態(症状)に応じて料理するのが薬膳の本当の意味なのです。
西洋医学の栄養学ではカロリー計算によって栄養を考えがちです。
東洋医学ではカロリーは考えず、食材は大きく二つに分類されます。
体を温める食べ物と冷やす食べ物です。
たとえば、80カロリーのじゃがいも、玉ねぎ、バナナは、それぞれ、中間のもの、温めるもの、冷やすものと考えるのです。
そして、暑い時期は冷やすものを食べるようにし、寒いときは温めるものを食べるように心がけ、常に体がどちらかに偏らないようにします。
中国が発症の薬膳ですが、朝鮮はもちろん、海を渡り日本にも伝わりました。
日本の伝統的な季節の食事は、薬膳の考え方に基づいています。
たとえば、日本の御節の定番の黒豆や昆布巻きなど黒いものは、体を温める作用が強いので寒い正月にはもってこいです。
その食材一つ一つが冷やす食べ物なのか、温める食べ物なのか、どういった効能があるのか、全部おぼえるのは覚えるのは大変です。
しかし、日本には四季があり、季節に応じて、収穫される食べ物は違います。
今の季節に一番とれるということは今の季節に適したパワー、効能があるということなのです。
そもそも疲れや病気、ストレスを感じるのは人間だけではありません。
動物はもちろん、野菜や果物だって寒さを感じるし、乾燥もします。
でも、野菜や果物はどんなに寒くてもあたたかいところへ移動できないし、乾燥して干からびそうでも自分で水を飲んだりできません。
虫がついても、払いのけることもできません。人間のように、その状況から逃げることができないわけです。それでもじっと耐えることができるのは野菜や果物自身が強い免疫力を作り出すからなんだそうです。
たとえば、にんじんはオレンジ色、ねぎのツンとしたきつい臭い、これは野菜が自らを守るために作り出した免疫物質なのです。これをファイトケミカルといい、植物のアクや色、香り、辛味などに含まれています。 未解明な部分は多いのですが、今注目の物質です。
こういった食材のもつパワー、効能は、同じ食材でも、その食材の旬の時期に取れたものに一番秘められています。では、どのようにそのパワーが発揮されるのかを季節と体の変化とあわせてお話していきます。
四季に応じて食材があるように、皆さんの体にも四季があるのです。
春・・・「養陰補肝」
木々は上へ上へと伸び、冬こもりの虫や動物も外へ出てくる
人も、冬に蓄えられたエネルギーを外へ発散しよう、出そう出そうとします。
春だから花見でもいこうかとか、ドライブしようかとか。
血流が良くなり肝臓の動きが活発になる
元気、やる気などがでてきて開放的になるけど、不安定にもなりやすいので五月病などもおこりやすい。
トラブルとしては、(のぼせ、頭痛、めまい、目の充血、鼻づまり、のどの痛み、イライラ、うつの悪化)
肝臓を労わる「すっぱいもの」「苦味のあるもの」が有効
シジミ、あさり、せり、ニラ、イチゴ、菜の花、春キャベツ、ウド、青梗菜、フキノトウなど
夏・・・「補陰養心」
夏は植物が生長のピークを迎えるように人の体も、心臓からたくさんの血が送られ、暑さに負けないようフル活動します。
また暑さで熱がこもらないよう汗を良く出し、水分代謝を盛んにします。
しかし日本の夏は湿度が高い、それなのに喉が渇くからと冷たい飲料水をがぶ飲みしたりすると、体の中に湿度がたまりやすく調子が悪くなりがちです。
そこで、水分代謝を整える、カリウムの多い生野菜や果物をとり、体を程よく冷やすことがたいせつです。
心臓を労わるものが有効
桃、セロリ、トマト、納豆
冷やすもの
ナス、きゅうり、冬瓜、スイカ
胃腸に優しいもの
梅干、かぼちゃ、しそなど
また、食べ過ぎると熱がこもりやすいので、腹八分目が大切。
秋・・・「培陽潤肺」
秋は作物が実り、成熟する季節です。
自然のリズムは下へ内へと向いていきます。
人の体も、冬に向かってエネルギーを蓄え始め、体だけでなく心も、物思いにふけったり、読書や音楽鑑賞など自分のことに時間を割きたくなるのは下へ内へのリズムになるからです。
空気が乾燥し、のどや気管支など呼吸器系が不調になりがちなので、肺を温め、のどによい食物をとります。
肺を温める
梨、栗、ぎんなん
のど、せきによい
れんこん、ごぼう、きんかん、はちみつ
今、スーパーや八百屋さんにいくとらっきょう、梅、新しょうがの3つがところせましと並んでいます。
あと1.2週間たつとまったく見られなくなる、風物詩といえましょう。
体調が良くないな、というサインが出たときは特に意識して季節の食材を選びます。
そうすると食材パワーで皆さんの体に備わっている自然治癒力が高まり、体をチューニングしてあげることができるのです。
ポイント2つを思い出してください。
まずは自分の体のことをしって、旬の食材からパワーを分けてもらいましょう。
また、その2つを最大限に生かすために大切なことがあります。
それは、しっかりと寝るということです。
皆さんの体の修復は寝ている間、特に夜10時から2時までにかけて最大に働きます。
自分にあったパワーを食べたなら、しっかりと修復する時間をもってあげましょう。そうすることで、皆さんの治癒力はさらに高まります。
春の食事が夏の体を、夏の食事が秋の体を作っていきます。
一年を通じて、何年もかけて少しずつ高まっていくものです。
約6週間で季節は変わります。日本という四季のある国で、食事でも四季を感じながら、皆さんの自然治癒力を高め、病気をよせつけない、病気になっても直りやすい体をつくっていってください。
以上で、自然治癒力を高めるお話はおしまいです。
ありがとうございました。
自然治癒力
例えば、今の季節でお勧めなのは、しょうがです。
え?温かくなったのに、またしょうが?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しょうがの中でも「新しょうが」というのものをご存知でしょうか?表面が白く、赤い茎がついているものです。
通常の黄色のしょうがとは栽培方法が違い、みずみずしく、香りと食感がとてもよいのでうすが、日持ちしないため、今の時期しか食べられません。
生姜は、薬膳の中でも生姜(ショウキョウ)という生薬のひとつで、一般的な医療用漢方薬の70%以上に用いられ「しょうがなしでは、漢方は成り立たない」といわれるほどです。
体を温めるとして最近はしょうがブームですが、しょうがにはいろいろな作用があります。
加熱すると、血管を拡張させ、血行が良くなるため体を温める生食すると、免疫力が高まります。
なので、なんでもかんでもしょうがをとるのではなく、冷え性の方はしょうがを煮だしたもの(鍋とか)とり、風邪などの体調不良の方は摩り下ろして生で取るようにするのが最適な取り方といえます。
今の時期に出る新しょうがは、千切りにしてサラダに入れてもおいしく食べられます。生姜は殺菌効果もあるし、香りで気のめぐりをよくするため、だるさを感じる今の時期には、ぜひ食べていただきたいもののひとつです。
誰だって、病気になると、健康ってすばらしいなって思いますよね。
できれば病気とは無縁で、もし病気になってもすぐ直る丈夫な体がほしい。
そもそも病気はいろんな種類があって、原因も症状も様々ですが、治すのはひとつしかありません。
医者?薬?
医者も薬も直すお手伝いをしてくれるだけです。